【前山地区】前山地区の生き字引・鴨部川の番人
【前山地区】前山地区の生き字引・鴨部川の番人
こんにちは!さぬき市集落支援員の松木優紀です。
私が集落支援員になって初めて担当したのは前山地区です。江戸時代後期から戦後まで、同地区の鴨部川沿いでは、水車を利用した製粉業を営んでいた家がたくさんあったことを集落巡回の中でお聞きしました。
昨年の秋、元水車主で製粉業に携わっていた細川敏弘さん(90歳)に話をお聞きする機会に恵まれました。細川さんは大正14年、現在の中津自治会生まれ。幼少時代から小麦粉をつくる水車製粉業に従事してきました。
水車の動力は、もちろん鴨部川の水の流れ。数軒の家がそれぞれの水車を管理し、できあがった小麦粉は荷馬車に載せて行商していたそうです。水車の素材には松ヤニが多い肥松を使い、水車全体にコールタールを塗りつけることで腐食を防ぎつつ大切に使っていたと教えてくれました。
しかし、輸入小麦に押され、水車製粉業の歴史は1965年に9軒が廃業したことで終わりを迎えます。
1975年3月に完成した前山ダムに、川から水が流れ込んで満水になるまでの様子を見守り続けたのも細川さんです。
春に完成したことから梅雨を経て湖面が満水になるまで相当な日数を要したそうで、その間、心を配り続けたと細川さんは語ります。集落がダムに沈む姿も心に強く残っているそうです。
前山ダムがあって当たり前の姿しか知らない平成生まれの私にとって、昔の鴨部川上流の様子や水車を使った生業があったことは大きな驚きでした。
90歳の現在もお元気な細川さんの話は新鮮で、次世代に語り継いでいきたいと強く感じました。支援員として、今後も地域の古老の話を記録し、伝えていかなければならないと思っています。