コンピュータ断層撮影装置(CT)は、寝台が装置の真ん中に空いた大きな穴(ガントリー)の中を通る間に、360度の方向からエックス線を当て、体の輪切りの画像を作り出します。
以前のCTはガントリー1回転で1断面のデータしか得ることができませんでしたが、最近のCT装置は検出器の数(列数)が増えて、1回転でたくさんの断層像を撮ることができるようになりました。その結果、心臓など常に動いている臓器も心拍変動などの影響を受けにくく、かつクリアな画像を得ることが可能となりました。
表は、64列CTと、従来からある動脈穿刺による心臓カテーテル検査とを比べたものです。造成剤を使用しないと冠動脈は見えませんので、両者とも造影剤アレルギーの危険性があります。
64列CTの有利な点は、動脈を穿刺しないため、出血に伴う危険がないこと、検査そのものに要する時間がわずか10数秒ですむこと、外来での検査が可能で全く入院の必要がないこと、検査費用もカテーテル検査の約5分の1ですむことなどがあります。
一方、心臓カテーテル検査の方が優れている点としては、検査の信頼性や精密度が高度で、石灰化・頻脈・心筋症などの合併症のある患者さんの評価ができ、さらにインターベンション治療も同時にできることなどがあります。両者ともそれぞれ利点と欠点はありますが、64列CTが心臓疾患の疑われる患者さんにとってきわめて侵襲の少ない、身体にやさしい検査機器であることは間違いありません。すでに外国では、冠動脈の診断造影は、心臓カテーテルではなく冠動脈CT検査が行われています。
図1は、約400枚の断層画像を瞬時に再構築して作成した「冠動脈に異常のない心臓CT」のVR画像です。左冠動脈が大動脈基部から出て、心臓表面を下方に枝分かれしながら左心室心筋内に分布している様子が手に取るように分かります。
この心臓画像は静止画ですが、ワークステージョンの再構築画像では、あらゆる角度から本当にはっきりと鮮やかに観察することができます。
図2は、CPR像といわれるもので、冠動脈狭窄や石灰化の検出に有効です。
図3は、50歳代男性で、基礎疾患として糖尿病がある方です。左冠動脈下行枝に不整形の狭窄(矢印)があり、MPR法という方法で画像処理しますと、狭窄部分のプラークのCT値は48HUと低値であり(不安定プラークといいます。)、将来プラークの破綻が危惧され、糖尿病を含めた冠危険因子の厳格な管理が必要です。
図4は、狭心症の患者さんで、ステントという金属が矢印の冠動脈内に2個留置されています。図のようにその内腔をはっきりと観察することができ、ステント内狭窄の評価が可能となりました。
図5は、バイパス手術後の方で、バイパス血管(矢印)の開存の有無や吻合部の状態が把握できます。左室の壁運動異常、壁厚、収縮能などの心機能評価は、従来、心エコー検査や心筋シンチで行っていましたが、図6のように64列心臓CTでもできるようになりました。
最後に私たち病院職員は、今後とも検査及び診断能力を高めて、皆様方により早くてきれいなCT画像と安心できる医療を提供できるようにさらに努力していきたいと思います。なお、地域の医療機関からのご依頼やご紹介での検査も承っておりますので、よろしくお願い申し上げます。